「お手間を取らせてしまい」はビジネスでよく使われる機会の多い敬語表現です。
しかし、この言い回しの正しい意味を曖昧に理解している人も多いです。そこで「お手間を取らせてしまい」の意味やビジネスでの使い方についてわかりやすく解説します。
「お手間を取らせてしまい」の意味とは?
ビジネスシーンでよく使われることが多いのが「お手間を取らせてしまい」です。この言葉の意味をきちんと理解せずに使っている方もいるでしょう。こちらでは「お手間を取らせてしまい」の意味を詳しく説明します。
「手間」はある事柄をするのに必要な労力や時間
まず「手間」というのは、何かをするために必要な労力や時間のことを指しています。
たとえば「手間がかかる」という言葉が使われることが多いですが、これは、ある作業をするための労力や時間のことを指す意味で使われているのです。
「手間」という言葉だけでは、その労力や時間が大きいか小さいかは関係ありません。特に他人に対して使う際には、それがあまりたいしたことでなくても「手間」と表現するケースが多いです。
「手間」は幅広いものに対して使うことができるのです。たとえば「手間取る」という表現があり、これはいろいろな行為に対して使うことが可能です。「手間」は意味が限定されておらず、利用範囲がとても広いのです。
「お手間」は丁寧な表現
「手間」という言葉には敬語としての意味は含まれていません。したがって、敬語として「手間」を使いたいならば、「お手間」として使うのが正しい敬語となります。「お」をつけることで丁寧な表現になっているのです。
目下や同格の人間に対して使うならば「手間」でも構いません。しかし、目上の人や敬意を払うべき場面などにおいては「お手間」という形で使うのが一般的でしょう。
「お」をつけたからといって意味は変化しないです。ただし、丁寧さが増すため、敬語としてより適切な形となっているのです。「お時間」と同じような使い方であると理解しましょう。
謝罪や感謝の意味
「お手間を取らせてしまい」の意味とは、相手に労力や時間をかけたということが直接的な意味となります。ただし、実際には「お手間を取らせてしまい」の後に「申し訳ございません」と謝罪の言葉がつくことが多いです。
「お手間を取らせてしまい」は謝罪や感謝の意味合いの文面で用いられることが多い言葉なのです。しかも、敬語的な表現となっているため、「お手間を取らせてしまい」はビジネスで目上や上司、取引先などに使うことが多いです。
相手に対して申し訳ないという意味を伝えるための敬語としてよく使われます。
「お手間を取らせてしまい」の使い方
実際にビジネスでは「お手間を取らせてしまい」をどのような場面でどんな使い方をするべきなのでしょうか。敬語の使い方は難しい問題であり、正しい使い方を理解するべきです。
そこで、こちらでは「お手間を取らせてしまい」の使い方について詳しく説明します。ビジネスで役立ててください。
相手に迷惑や苦労をかけたとき
基本的には相手に時間や労力を割かせてしまったときに、そのことに対して謝罪や感謝をするという場面で使うのが一般的です。使い方としては「お手間を取らせてしまい申し訳ありません」が正しいです。
この使い方はとても便利であり、あらゆる場面で用いることができます。「お時間を取らせてしまい」だと時間的なことにしか使えないのですが、「お手間を取らせてしまい」であれば、もっと幅広い使い方ができて便利なのです。
「お手間を取らせてしまい」は時間だけではなく労力も含んでいるため、使い方にあまり制限がありません。ビジネスで目上や上司などに対して積極的に用いましょう。
目上や上司・取引先に使う
基本的に「お手間を取らせてしまい」は敬語のため、ビジネスで目上や上司、取引先に対して用いるのが一般的な使い方です。もちろん、目下に対して「お手間を取らせてしまい」と言う使い方も絶対にないわけではないです。
ただし、一般的に敬語というのは目上の人に対して用いるべきです。社内の目下の人間に対してあまりにもかしこまって敬語を使うのは、逆に目下の人も気を使ってしまい、良い結果を生まないかもしれないからです。
使い方としては、敬語を使うべき対象に対して「お手間を取らせてしまい」を用いるのが適切です。「お手間をいただき」と使うこともできます。類語がたくさんある表現です。
作業が大変かどうかは関係ない
「お手間を取らせてしまい」は相手に謝罪や感謝を伝えるというニュアンスで用いられます。したがって、相手が本当にその行為に苦労したり、迷惑をしたりするかどうかは関係ないです。あくまでも気持ちの問題なのです。
そのため、小さな迷惑をかけてしまう場合であっても、「お手間を取らせてしまい」を使うことはビジネスで多いです。これがちょっとした気遣いとなり、相手の気分を害さないで済むため、トラブルを予防できるのです。
「お手間を取らせてしまい」の例文
「お手間を取らせてしまい」は敬語としてさまざまな場面や対象に用いることができます。しかし、実際に使うとなると、具体的にどのような場面や対象へ使えばいいのか分からなくなることがあります。
こちらではさまざまな場面や対象における、「お手間を取らせてしまい」の使い方を例文を交えて解説します。例文を参考にしてビジネスで「お手間を取らせてしまい」を積極的に活用してみましょう。
【場面別】「お手間を取らせてしまい」の例文
「お手間を取らせてしまい」はビジネスでいろいろな場面で使われます。ビジネスの具体的な場面における例文を紹介します。
訂正した書類を確認してもらう
- お手間を取らせてしまい申し訳ございませんが、お目通しよろしくお願いします。
- お目通しのお手間を取らせてしまい申し訳ありません。
取引先や上司などに書類を再度確認してもらうという機会は少なくないです。書類に不備があり訂正をしたものをあらためて提出することもあります。そんなときに、書類の確認をしてもらう際に「お手間を取らせてしまい」を使えるのです。
この場合、「お時間を取らせてしまい」と言い換えることも可能です。「二度手間をおかけして」と言う場合もあります。相手に「お手間を取らせる」ことへの謝罪や感謝の意味合いで使われるのです。
トラブルの謝罪や対処法を案内するとき
- こちらの確認不足でお手間を取らせてしまい大変申し訳ありませんでした。
- ご利用のお客様にはお手間を取らせてしまいますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
こちらは、商業施設においてトラブルを謝罪したり、解決策を案内したりするときに用いられます。たとえば設備が故障してしまい、別の設備を利用してもらいたいときの案内に「お手間を取らせてしまい」という言葉がつけられることがあるのです。
【対象別】「お手間を取らせてしまい」の例文
「お手間を取らせてしまい」はどのような対象に使えばいいのでしょうか。「お手間を取らせてしまい」を使う対象ごとの例文を紹介します。
目上・上司に対して使う
- お手間を取らせてしまい申し訳ないですが、こちらの書類を確認していただけませんか?
- お手間を取らせてしまいますが、都合のいい日時を教えていただけませんか?
たとえば、資料を作成したらそれを上司に確認してもらいたい場合があります。そんなときには上司の「お時間」を奪うことになるため、「お手間を取らせてしまい」という言葉を使うとよいです。
取引先に対して使う
- こちらの不注意でお手間を取らせてしまい申し訳ありません。
何かこちら側のミスによって取引先に迷惑をかけてしまうことはよくあります。そんなときにはしっかりと謝っておくことがビジネスではとても大切です。そんなときには「お手間を取らせてしまい」の出番となるのです。
「お手間を取らせてしまい」の類語
「お手間を取らせてしまい」には類語表現がいくつか存在しています。類語を知っていると、ビジネスにおいてさまざまな言葉遣いを上手く使い分けられるようになります。類語のパターンをいろいろと知っておくととても便利です。
「お手間を取らせてしまい」の類語表現について紹介します。
「苦労をかける」
「お手間を取らせてしまい」は相手に苦労をかけてしまうという意味のため、そのまま「苦労をかける」という類語で言い換えることができます。
ただし、「苦労をかける」だと目上の人に対して適切な言い方ではありません。基本的に目下の人に対して使う言葉でしょう。敬語としては「ご苦労をおかけします」という言い方があります。
基本的に「苦労をかける」は目上から目下への言葉のため、目上の人に使う際には注意するべきです。
「お手間をかける」
「お手間を取らせてしまい」と似たような言葉として「お手間をかける」という表現があります。こちらは類語といえるでしょう。たとえば、「お手間をおかけして申し訳ありません」や「お手間をおかけしました」と使います。
ただし、厳密にいうと「お手間をかける」は間違えています。これは「お手数をかける」と混同されて使われているのです。そのため、「お手間」は「お手間を取らせてしまい」が正しいです。
ただし、「お手間をかける」のほうも慣用的に正しいとされてきています。相手が敬語に厳しくない人であれば、目上や上司に使っても問題にならないかもしれないです。
「お時間を取らせてしまい」
「お手間を取らせてしまい」を時間の意味で使いたいならば、「お時間を取らせてしまい」に言い換えることが可能です。こちらも類語の1つといえるでしょう。
ただし、「お時間を取らせてしまい」は「お時間」とあるため時間に関係することにしか使えません。労力をかけるようなことの場合は「お時間」は使えないため注意しましょう。
また、「お時間」だと直接的すぎる場合があります。はっきりと「お時間」と言うよりも「お手間」と言ったほうがより柔らかい表現となるのです。「お時間」と「お手間」は類語として上手く使い分けましょう。
「お手間」と「お手数」の違いと使い分け
「お手間を取らせてしまい」の類語に「お手数をかけてしまい」があります。これは「お手間」と「お手数」が類語なのです。これらの類語としての違いや使い分け方について理解しておきましょう。どんな違いがあるのか説明します。
「手数」は作業のニュアンスが強い
基本的に「お手間」も「お手数」もほとんど同じ意味です。どちらもある事柄をするための時間や労力のことを示しています。
ただし、「お手間」については時間的なニュアンスが強いのですが、「お手数」については作業が煩雑だったり難しいというニュアンスが強くなっています。この違いを意識して上手く目上や上司に対して使うとよいです。
「手数」は「かける」と表現する
「手数」は「手数をかける」と表現されます。「手間をかける」の場合は自分のことに対して用いるのですが、他人に敬語として使う場合は「お手間を取らせてしまい」
となります。「手数」は「お手数をかける」と他人に使うことが可能です。
自分の行為に対して「手間がかかる」と言えるのですが、「手数がかかる」とはあまり言いません。敬語として上司や目上の人に使うならば、「お手数をかけてしまい」か「お手間を取らせてしまい」が正しい使い方なのです。
作業工数が複数ならば「手数」のほうがよい
意味がほとんど同じため、「手数」と「手間」を使い分けることはなかなか難しいです。この場合、相手にしてもらうことや迷惑をかけたことの内容に注目をして使い分けましょう。
たとえば、相手にしてもらったことの作業が複数の工程にわたるようなものであれば、それは「お手数をかけた」ことになるのです。
一方、相手が1つのことに対して時間をかけた場合は「お手間を取らせてしまい」でよいでしょう。
「お手間を取らせてしまい」をビジネスで使うコツ
ビジネスで万能に使えるのが「お手間を取らせてしまい」です。しかし、やみくもに使ってしまっては、相手に失礼になるかもしれないです。そこで「お手間を取らせてしまい」を効果的に使うためのコツを紹介します。
ちょっとしたことにもすぐに使うようにする
相手に少しでも迷惑や苦労をかけてしまったならば、「お手間を取らせてしまい」を用いて謝罪することをおすすめします。単に謝罪をするよりも「お手間を取らせてしまい」というクッションを入れることによって、より柔らかい表現となります。
ビジネスでは相手の気分を害してしまうことを極力避けなければいけないです。そのため、特に取引先や顧客に対しては「お手間を取らせてしまい」を積極的に用いるとよいです。
できれば対面や電話で声を通して伝える
「お手間を取らせてしまい」は手紙やメールで使う場合が多いです。しかし、相手に謝罪をしたいならば、直接対面で謝罪をしたり、電話で声を使って謝罪をしたりすることが大切です。
声を通して謝罪を伝えることによって、よりこちら側の誠意を相手に伝えることができるのです。相手が怒っているならば、声で謝罪をすることで怒りを鎮める効果を期待できます。
語尾を工夫する
「お手間を取らせてしまい」を使う際にはそのあとに続く言葉に注意しましょう。語尾を丁寧にすることによって、より効果を高めることができるのです。
一般的には「お手間を取らせてしまい申し訳ありませんでした」と続くことが多いです。「お手間を取らせてしまいすみません」と謝るのは言葉が少し軽いため注意しましょう。
「お詫び申し上げます」や「反省いたしております」といった言葉も「お手間を取らせてしまい」の後につなげやすいです。
「お手間を取らせてしまい」を使いこなそう
敬語の使い方がビジネスに与える影響は大きいです。周りから敬語を使いこなせる人材であると思われれば、得をする場面はたくさんあります。こちらで紹介したことを参考にして、上手く「お手間を取らせてしまい」を使いこなしてください。
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