ビジネスメールや手紙等、「ご指導のほどよろしくお願いいたします」という挨拶を書くことがあります。
これからもご指導をお願いしたいという気持ちを伝えるのに便利ですが、正しい使い方はできていますか。「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の意味や使い方を解説します。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の使い方【基本】
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」という表現は、ある意味これだけで一セットになっている敬語ですが、どういった時に使う言葉になるのでしょうか。その場で思いつきやすいのは「メールや手紙の挨拶だ」という人も多いでしょう。この言い方について、基本的な使い方を説明します。
ビジネスメールや手紙の締めの挨拶
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」が一番使われるのはメールで本文の最後に書く締めの挨拶ではないでしょうか。送る相手はビジネスシーンなら上司、そうでないなら先生といった目上の人になります。「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の一番基本的な使い方はこのような締めの挨拶です。
締めの挨拶としての使い方は、メール以外にも紙の手紙でも適用できます。まだ新人で入ってきたばかり、教えてもらうことばかりの人にとって「ご指導」をしてくれる人の存在はかなり重要です。日頃のお礼と共に「これからも教えて欲しい」とお願いする気持ちを締めの挨拶にすることで、相手に伝えることが出来ます。
上司に宛てた年賀状や暑中見舞い等季節の挨拶
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」のもう一つの使い方として多いのは、年賀状や暑中・寒中見舞いといった少し特別な手紙です。「あけましておめでとうございます」等の季節の挨拶と一緒に一言添える言葉として「ご指導のほどよろしくお願いいたします」と書くと好印象です。
この使い方はあくまで社内の目上の人に向けた使い方になります。他のビジネスメール・手紙も同様です。「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は目上の人だけに使える敬語ですので、同僚や部下には使わないようにしましょう。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の意味とは
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の使い方は分かりましたが、そもそもこの表現はどんな意味を持っているのでしょうか。「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は敬語と言いますが、どの部分が敬語になっているのでしょうか。
これらのことを把握していないと、正しい使い方も出来ません。「ご指導のほどよろしくお願いいたします」を少し分解してそれぞれの意味を解説してから、この表現自体の意味を説明します。
「ご指導」の意味
「ご指導」は「指導」という言葉の頭に敬語の「ご(御)」がついたものです。敬語の種類としては、「ご指導」をするのは相手(目上の人)なので、必然的に尊敬語になります。敬語の詳しい種類については後述します。
「指導」は日常でもよく使われているように「教え導く」という意味です。単純に「教える」のではなく、相手が成長できるようにしていくのが「指導」の本当の意味になります。「教える」と「指導」は根本的に意味が違うため、はき違えないようにしましょう。
「のほど」の意味
「のほど」は漢字で書くと「の程」と書きます。言い回し表現なので意味らしい意味はなく、よくビジネス敬語で使われる「婉曲表現」です。「婉曲表現」とは後に来る言葉の圧を和らげるために用いられるものです。「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の他に「ご連絡のほどお願いいたします」等でもよく使われます。
たとえば「ご指導よろしくお願いします」や「ご指導よろしくお願いいたします」「ご指導お願いします」でも、「ご指導」をお願いする意味に変わりはありません。しかしこれらは「お願いします」という依頼の意味が強く出ていて、少々目上の人には命令口調っぽく聞こえてしまうリスクがあります。
「お願いなのに命令形?」と思うかもしれませんが、お願いや依頼というのは言われている側には圧力を感じるものなのです。「のほど」を入れた「ご指導のほどよろしくお願いいたします」だと、ここまでの圧は感じません。このためビジネスで目上の人にお願いをする際は、「のほど」を入れるのです。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は「よろしくお願いします」とほぼ同じ意味
「ご指導」と「のほど」の意味が分かったところで、「ご指導のほどよろしくお願いいたします」に戻って意味を考えてみましょう。「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は、相手が不愉快にならないくらいの柔らかい表現で「ご指導」をお願いする意味の敬語、ということになります。
もっとわかりやすく言えば「よろしくお願いします」とほとんど同じ意味です。メールの締めの挨拶や年賀状等季節の挨拶のメッセージ等使い方もほぼ同じになります。そのまま言い換えできるほどなので、言いたいことは「よろしくお願いします」とほぼ同じと考えても問題ありません。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の例文【ビジネス・メール・手紙・挨拶】
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の基本的な使い方と知識としての意味を解説しましたので、次に例文を見ていきます。実習後のお礼メール等普段のビジネスシーンで使えるものから、年賀状の挨拶として使えるものまで、実際に使う機会の多いものを紹介します。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の例文【ビジネスの基本】
例文①:「今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。」
例文②:「本日はありがとうございました。明日からもご指導のほどよろしくお願いいたします。」
例文③:「ご連絡承りました。ご指導のほどよろしくお願いいたします。」
自分が「ご指導」をされる側の場合だと、ビジネスシーンで使用する機会は何かと多くなるものです。使い方の項でメールや手紙によく使われると説明しましたが、対面での挨拶で「ご指導のほどよろしくお願いいたします」と口頭で言うことも出来ます。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の例文【メール編】
例文①:「ご連絡をいただきありがとうございました。ご指導のほどよろしくお願いいたします。」
例文②:「講義の日程が決まりましたのでご連絡致します。以上の日時でご指導のほどよろしくお願いいたします。」
例文③:「ご連絡をくださいますようお願い申し上げます。お忙しい中恐縮ですが、ご指導のほどよろしくお願いいたします。」
ビジネスで一緒に働く上司や、大学の先生に宛てたメールの締めの挨拶として、「ご指導のほどよろしくお願いいたします」を使うことが出来ます。講師等人によっては「ご指導」をするのが仕事という人もいますから、「ご指導」そのものをお願いするといった使い方もあります。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の例文【手紙編】
例文①:「伊東先生には本当に感謝しております。まだまだ後半がありますが、これからもご指導のほどよろしくお願いいたします。」
例文②:「何かありましたらお気軽にご連絡をください。それでは、ご指導のほどよろしくお願いいたします。」
紙の手紙の紙面に綴る「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の使い方は、メールの使い方とはあまり大きく変わりません。要件に関わらず一番使いやすいのは締めの挨拶でしょう。また文章では「よろしくご指導のほど、お願い申し上げます」という使い方もあります。
最近はこのようなメッセージはメールが多く、文書でもこうした教えを乞うようなことはまず書きません。そのため手紙でこういったことを書くことはあまりないですが、ひょんなことから書かなければならない可能性というのは出てくるものです。その時のためにも、頭の片隅にでも入れておきましょう。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の例文【年賀状編】
例文:「昨年は大変お世話になりました 今年も変わらぬご指導のほどよろしくお願いいたします。」
上司や先生に宛てた年賀状では、このような一言メッセージで「ご指導のほどよろしくお願いいたします」が使われることが多いです。最近はメールや印刷が普及していますが、手書きで一言添え書きするだけでも印象は一気に良くなるでしょう。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の例文【挨拶編】
例文①:「ご連絡をいただきました、今野です。本日はご指導のほどよろしくお願いいたします。」
例文②:「この度はお忙しい中ご連絡までしてくださり、ありがとうございました。今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。」
ビジネスシーンに関わらず、相手が「ご指導」をしてくれる人であれば「ご指導のほどよろしくお願いいたします」を使うことが出来ます。挨拶として言う時も、相手への感謝の気持ちを忘れずにしましょう。対面でもメールや手紙でも同様です。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」はどんな敬語?
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は敬語であるということは何度も説明していますが、どのような敬語なのでしょうか。というのも、一言に敬語と言っても様々な種類があり、それぞれ使い方が定められているのです。
敬語も使い方を間違えると相手に失礼になったり、相手に嫌な思いをさせたりしてしまいます。これは「ご指導のほどよろしくお願いいたします」に限らず、他の表現もそうなのです。特に目上の人に対しては敬語の使い方に気を付けるようにしましょう。
敬語の種類
尊敬語 | 相手の行動を丁寧にすることで相手を敬う |
謙譲語 | 自分の行動をへりくだることで相手を敬う |
丁寧語 | 口調を丁寧にする |
敬語には「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の三種類があり、これらを含んでいて初めて敬語と言えます。逆にこれがないとビジネスでは失礼になります。現に「ご指導のほどよろしくお願いいたします」も尊敬語と謙譲語と丁寧語が含まれています。
「ご指導」は意味の項でも解説した通り、「ご連絡」「ご査収」と同じく「指導」を丁寧にした敬語です。ここでは尊敬語になります。そして「よろしくお願いいたします」は謙譲語にあたります。最後の「ます」は丁寧語の役割を持っています。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は目上の人に使う敬語
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は目上の人に使う敬語です。「ご指導」するのは相手であり、「お願い」するのは自分だからです。特別な事情がない限り「ご指導」をするのは上司になる筈ですが、同僚や部下には使えません。
逆に「致します」を抜いた「ご指導のほどよろしくお願いします」は敬意が足りないとみなされる可能性があります。「致します」は謙譲語なので、特にビジネスで目上の人に言う場合は「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の方が適切です。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は「ご指導のほどよろしくお願い申し上げます」と言い換えることが出来ます。どちらも丁寧な言い方ですが、「お願い申し上げます」は本来二重敬語なので不快に感じる人もいますので注意しましょう。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」を使うときの注意点
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は目上の人にも使える表現ではあるものの、使い方として上記で紹介したものとはまた別の注意点があります。ビジネスならではのものと、ビジネスであってもなくても関係ないものがそれぞれあることから、使う際に以下の要点をよく確認しておくのをお勧めします。
ビジネスでの「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は社内メールや手紙のみで使う
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」を使えるのは社内の上司だけです。会社によっては社外の人で「ご指導」をしてくださる人がいることだってありますが、社外の人に「ご指導のほどよろしくお願いいたします」を使うべきではないとされています。
社外の人に言いたい場合は「ご高配」や「ご厚情」「ご愛顧」といった言葉を使うのが基本です。いずれも「親しいお付き合い」や「ひいきにすること」という意味で、メールから文書まで幅広いシーンで使われています。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」はこれからも付き合いがあることが前提
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は「この先もご指導を頂く」ことを意味する表現なので、これからも相手とお付き合いがあることが前提になります。この先やり取りがなくなる、会わなくなる場合「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は使えません。
「ご指導」と「ご教授」「ご鞭撻」の違い・使い分け
「ご指導」は「相手を教え導く」というのが大まかな意味ですが、大体同じニュアンスでよく使われていることが多い「ご教授」「ご鞭撻」とはどういった違いが存在しているのでしょうか。今回は「ご指導」と「ご教授」「ご鞭撻」の違いと使い分けのしかたについて簡単に解説します。
「ご指導」と「ご教授」の違い・使い分け
例文①:「内藤先生に是非ご教授いただければと感じ、ご連絡させていただきました。」
「ご教授」は「技術や知識を教え授ける」という意味の言葉です。どちらかというと学問や技能の継承という面が強いので、「ご指導」とは根本的に違う言葉になります。「ご指導」は「相手に基本的な知識や方法を教え、そこから自分で成長できるように導く」ことです。
「ご指導」と「ご鞭撻」の違い・使い分け
例文:「以前のご連絡にてご鞭撻を頂いたことに誠に感謝いたしております。」
「ご鞭撻」は「なまけたりさぼったりしないように強く励ます」という意味です。鞭を打つというイメージだと考えると分かりやすいでしょう。「ご指導」とは「導く」という点は似ていますが、「教える」という意味合いが「ご鞭撻」にはありません。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の言い換え・類語・類義語
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は何度もお伝えしているように丁寧な言葉ですが、そればかり使うのも印象が悪くなってしまいます。特に職場では同じ表現を使うよりも、違う言葉で言い換えた方がスマートで評価も上がりやすくなります。「ご指導のほどよろしくお願いいたします」と同じ意味と使い方が出来る表現について簡単に説明していきます。
「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」等
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」の類語は「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」や「ご指南のほどよろしくお願いいたします」等があります。どれもほとんど同じ意味・同じ使い方で言い換えられますので、状況に合わせて活用してみるのも良いでしょう。
ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします
例文:「ご連絡をいただいた茅野です。何卒ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」
「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」は、「ご指導のほどよろしくお願いいたします」と同じくビジネスシーンで頻出する敬語表現の一つです。意味もほぼ同じで、目上の人に教えを乞う言葉です。「ご指導のほどよろしくお願いいたします」と違って取引先にも使えます。
ご指南のほどよろしくお願いいたします
例文:「セミナーのご連絡をいただき、ありがとうございました。当日はご指南のほどよろしくお願いいたします。」
「ご指南」は「ご指導」と同じ「教え導く」という意味を持つ言葉です。武術や芸術技能に関しても使われます。「ご指導のほどよろしくお願いいたします」や「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」のようなビジネスの決まり文句ではありませんが、表現の一つとして覚えておくのも良いでしょう。
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は心を込めて使おう
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」について解説しました。誰でも最初は「ご指導」をされる側ですが、いつかは「ご指導」する側になるかもしれません。そうなった際に「こんなビジネスパーソンになりたい」と思ってもらえる上司になるには、初めの内から「ご指導」をしてくれる人に感謝しなければなりません。
「教えを乞いたい」と感じた時や、これからもより良いビジネスの関係を気付いていきたいと思った時、メールや手紙でそのことを記すと良いでしょう。たとえメインの用件でなくても、挨拶として添えるだけで相手も「もっと色々なことを教えよう」と思ってもらえるでしょう。
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