アンカリング効果とは?具体例や活用法は?基準が違えば評価が変わる心理学

アンカリング効果とは、最初に与えられた数値や情報を基準として、そのあとのものごとを評価してしまう心理効果のことです。ただ5万円の炊飯器より、「今なら半額の5万円!」の炊飯器の方が買いたくなりますよね?そんなアンカリング効果の仕事や恋愛での活用法を紹介します。

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アンカリング効果とは?

アンカリング効果とは、最初に与えられた数値や情報を基準として、そのあとのものごとを評価してしまう心理効果のことです。 例えば、あなたが家電量販店で5万円の炊飯器を見つけたとします。

炊飯器にしては少し高いと思い、あなたはスルーするとしましょう。 ところが、もしその炊飯器が「通常価格10万円のところを、今なら半額の5万円!」と表示されていたらどうでしょうか?さっきよりも目に留まり、買いたくなりませんか?

先ほどの例はどちらも同じ炊飯器を同じ値段で売っています。それなのに後者の方が買いたくなってしまうのは、なぜなのでしょうか?それは、基準が異なるからです。 普通に5万円で売られている場合、お得かどうかの基準は炊飯器の相場との比較になります。

炊飯器の相場が3万円前後だという認識であれば、この炊飯器は高いと感じるでしょう。 しかし、「通常価格10万円」という情報が増えると、無意識に基準が10万円にすり替わります。基準が高くなった分炊飯器を安く感じ、思わず買ってしまいそうになるのです。 つまりアンカリング効果を簡単にまとめなおすと、元々の基準によって、同じものでも見え方が変わる効果ということです。

アンカリング効果の実験

アンカリング効果に関する実験があるので、ここで一つご紹介します。

大体の答えはいくつ?

とある実験で、被験者に5秒で以下の問題の答えが大体どれくらいになりそうか、を答えさせました。

「8×7×6×5×4×3×2×1=?」

被験者の回答の中央値は2200前後でした。 次に、先ほどのとは別の被験者に以下の問題の答えが大体どれくらいになりそうか、を答えさせました。

「1×2×3×4×5×6×7×8=?」

すると、その中央値は500前後にまで下がったのです。 この差が生まれている理由は、式を左から見たときに最初に目に入る数字が「8×7×6…」か「1×2×3…」かの違いです。 最初に目に入る数字が大きければ、それが無意識に基準となって大きな数字を答えやすく、小さければそれが基準になって小さな数字を答えやすくなってしまうのです。

アンカリング効果の具体例

人はものの良し悪しを判断するために何らかの基準を必ず求めます。基準なしに判断するのは非常に難しいからです。 そして基準があるところにアンカリング効果は現れるので、その効果は様々なところに見られます。ここではその具体例を抜粋して見ていきましょう。

この時計いくらだと思いますか?

これはシチュエーションの例ですが、例えば上の写真のような時計を見せられたとします。 その後、 「この時計、1万円よりも高いと思いますか?低いと思いますか?」 と質問された後に、 「では、この時計はいくらだと思いますか?」 と聞かれると、多くの人は1万円前後の価格を答えるそうです。

しかし、 「この時計、100万円よりも高いと思いますか?低いと思いますか?」 と質問された後に、 「では、この時計はいくらだと思いますか?」 と聞かれると、多くの人が100万円前後の価格を答えるようになります。

これは、事前の質問の1万円ないしは100万円という価格が無意識に基準となっているため、その基準に近い価格で予測をしてしまうというアンカリング効果の一例です。

アンカリング効果の活用には基準を操ろう

アンカリング効果を活用するためのポイントは、相手に基準を与えることです。 人はものごとを判断する時に、必ず基準を求めます。基準がなければ良し悪しがわからないからです。

そこにあらかじめ低い基準を与えておけば、それを上回る結果を見せたときに相手の印象をよくすることができます。

逆に最初に高い基準を与えてしまうと、低い方へと裏切ることになりやすいので、最初に与える基準をいかに低くできるか、というのがアンカリング効果を活用するためには重要です。

アンカリング効果の活用法【マーケティング編】

最初の例の通り、アンカリング効果はマーケティングに活用することが可能です。 ただ価格を表示するのではなく、通常価格と特別価格を並べることで、商品を安いと感じさせることができます。

他にも、絶版の商品を復活させて「売り切れで絶版になっていた商品が復活しました!」という宣伝をすると、元々頑張っても手に入らないもの、という基準のものが手に入る可能性が生まれたので、人はそれを買いやすくなります。

二重価格表示の悪用には要注意

同じものの値段を安く見せることのできる点で、アンカリング効果は非常に強力な心理効果です。 しかし強力であるがゆえに、それを悪用するような事件も発生しています。 通常価格を嘘の高価格に設定することで、値下がりが大きくてお得なように見せかける表示手法です。

過去にある野球チームの優勝セールで、通常価格を不当に高く設定することで割引後の価格を安く見せるセール方法を実施し、消費者庁からの注意がされたモールがありました。 このように、不当な通常価格を設定して上での二重価格表示は、景品表示法により厳しく取り締まられています。 悪用しようとせず、あくまで良識の範囲内で活用することが好ましいです。

アンカリング効果の活用法【仕事編】

アンカリング効果は仕事の場でも活用することができます。その活用法をご紹介します。

提出期限は余裕を持って設定する

上司に資料作成を任されたとします。何日でできるかと聞かれ、大体3日程度だと思っていたところをあえて「5日くらいです」と答えてみるとどうなるでしょうか。 その後、予定通り3日で資料を完成させて上司の元へ持って行くと、上司はあなたに対して、「予定より早く終わらせてきた」と好印象を抱きます。

逆に「2日でやります」と答えて3日で提出した場合は、遅れていることに対して怒鳴られてしまう可能性すらありますよね。 仕事自体は全く同じ3日間での提出でも、あらかじめ上司に与える基準を低くすることで、高評価を得ることができるのがアンカリング効果を活用するメリットです。

アンカリング効果の活用法【恋愛編】

低い基準をあらかじめ相手に与えることで、好印象を抱いてもらうことができるアンカリング効果は、恋愛でも活用できます。

デートに遅刻した時

例えば、気になる人とのデートの待ち合わせに遅刻してしまったとします。その時の遅れる連絡一つでも、アンカリング効果を活用することができます。 具体的には、もし10分ほど遅れそうな時はあえて「ごめん、30分ほど遅れます!」と、多めの時間を伝えるのです。

すると10分遅れて到着したあなたに、相手は「頑張って来てくれた」という印象を抱きます。 逆に「5分遅れる」と伝えてから10分遅れで到着すれば、相手は悪印象を抱くでしょう。

この印象の差は、遅れる分数の基準が異なるからです。遅刻時間の目安を5分と考えるか30分と考えるかで、10分遅れの印象はだいぶ違いますよね。 これも、アンカリング効果を活用した心理テクニックの一つです。

アンカリング効果と関連する心理効果

最後に、アンカリング効果に関連する心理学用語をご紹介したいと思います。

フレーミング効果

フレーミング効果とは、同じものでも環境や表現のされ方によって印象が変わる効果のことです。 アンカリング効果はフレーミング効果の一種といえます。商品にその通常価格がいくらであるという基準のフレームを当てることで、同じ商品でも安いという印象を与えているのです。

プライミング効果

プライミング効果とは、事前に与えられた情報や刺激が後の意思決定に作用する効果のことです。 例えば、「コ◯ラ←穴を埋めて単語を完成させよ」という問題を動物園の中で見かけたら、大多数の人がコアラと答えます。 しかし、自動販売機の前で同じ問題を見かければ、コーラと答える人が増えるのです。

環境によって受ける動物や自販機といった事前の刺激が、意思決定に影響しているのです。 プライミング効果は元の刺激が無意識にのちの連想や意思決定に結びつく効果なので、アンカリング効果が起こるのはプライミング効果で基準が商品の印象に結びついているためといえます。

松竹梅の法則

松竹梅の法則は、3択があった時に人は真ん中を選んでしまいやすい心理法則のことです。 800円、1000円のランチがある時多くの人は800円のランチを選びますが、そこの1200円のランチを加えて3択になると、人は1000円のランチを選ぶようになるのです。 これも周りのメニューの置き方を工夫することで1000円のランチの見え方をかえるフレーミング効果の一種です。

アンカリング効果を利用しよう

いかがだったでしょうか。 人は何かを判断する時に必ず基準を求めるため、その基準をうまくコントロールすることで相手に好印象を与えたりすることができます。

逆にアンカリング効果を知ることで、故意に与えられた基準に惑わされずに買い物ができるようになるでしょう。 生きるための様々な基準のコントロールは、時に自分の人生を引き締め、時に自分を守ってくれます。正しく理解して、活用していきましょう。

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