ございますは敬語?謙譲語?丁寧語?使い方や「あります」との違い

『ございます』という言い回しはよく使われますが、これは敬語なのでしょうか?謙譲語でしょうか?丁寧語でしょうか?

『ございます』と『いらっしゃいます』の違いと使い分けは意外と難しいです。同様に、疑問文の『ございますか』と『ありますか』の違いも気になります。

今回はこの『ございます』について解説します。

この記事の目次

『ございます』の意味

『ございます』の意味についてですが、まず『ございます』という言葉は動詞と補助動詞と2つの使い方がありますので、分けて考える必要があります。

まず、動詞の『ございます』ですが、これは動詞の『ある』です。
英語で言うところの『be動詞』や『exist』に相当します。

『ある』という動詞の丁寧語が『あります』になりますが、これをより丁寧にした言い方が『ございます』です。

次に、補助動詞の『ございます』についてです。
こちらも同じ『ある』ですが、補助動詞の『ある』の丁寧語が『ございます』ということになります。

補助動詞とは、前の文節に続けて用いられることではじめて文法的な機能を果たすもので、それ自体単独では意味をなさないものです。

『ご用意してございます』などが分かりやすい例です。ここでの『ございます』は補助動詞です。文法的に全く間違ってはいないのですが、最近では違和感を覚えるという人も多いので、通常は『ご用意しております』などの謙譲語を使う方が一般的です。

『ございます』の使い方・例文

それでは、『ございます』の使い方について例文を紹介しながら解説していきます。
動詞と補助動詞の違いに注意しながら、一つ一つ確認していきましょう。

例文①:一点確認したいことがございます

これは、動詞の『ございます』です。『確認したいことがある』の『ある』を丁寧語にしたものが、『確認したいことがあります』で、それをさらに丁寧にしたものが、『確認したいことがございます』という言い回しです。

『ございます』の最も簡単な例文と言っていいでしょう。
前に物の名前などの名詞を持って来れば、ほぼ何でも文章として意味が成立します。
『問題がございます』や『建物がございます』など、いくつでも例文を作れます。

例文②:すでにお願いしてございます。

これは大変間違われやすいですが、動詞の『ございます』ではなく、補助動詞の『ございます』です。

補助動詞としての『ございます』は、動詞の連用形と助詞の『て』の後に来る場合が多いです。
『する』という動詞の連用形である『し』に助詞の『て』が後ろに続き、そこに補助動詞の『ございます』が付いた形です。

『お願いしてある』の丁寧な言い方が、『お願いしてあります』であり、そのさらに丁寧な言い方が『お願いしてございます』ということになります。

『ございます』の意味についての見出しのところでも、補助動詞の例として出した『ご用意してございます』と全く同じことが言えますが、この補助動詞の『ございます』は最近ではあまり使われない傾向にあります。

このような『○○してございます』というような補助動詞としての役割は、昔から小説などでよく使われていた表現ではあるらしいのですが、違和感を覚えるという人が増えているのは事実です。

『○○してございます』は『○○してある』の丁寧な言い回しですが、この『○○してある』には暗に『とっくに○○しましたけど』や『もう○○してあるじゃないか』のような意味合いが感じられて嫌だという人もいるようです。

この点を踏まえて、もう一度『すでにお願いしてございます』や『ご用意してございます』という表現を見てみると、たしかに今時の言葉で言うキレ気味ではないですが、裏側にはそういう意図があっての言葉遣いに見えなくもありません。

そういった点で、『すでにお願い致しております』や『ご用意いたしました』などの謙譲語の方が好んで使われているようです。

例文③:大変お美しゅうございます

これも補助動詞の『ございます』なのですが、直前に来ているのが動詞ではありません。形容詞です。

『おめでとうございます』や『ありがとうございます』も同様なのですが、これは全て形容動詞+『ございます』の形です。

ここに挙げました3つの例ですが、いずれも『美しい』という形容詞、『おめでたい』という形容詞、『ありがたい』という形容詞のそれぞれウ音便と呼ばれるものです。学校で習いましたが覚えていらっしゃいますか?

こういった、形容詞+補助動詞の『ございます』の形は大変自然ですし、よく使われる表現です。

『ございます』は謙譲語?敬語?丁寧語?

まず大前提として『ございます』は敬語です。
そして、敬語というものは、大きく3つに分けられます。尊敬語と謙譲語と丁寧語です。
では、『ございます』この中のどれに当てはまるでしょうか。

まず尊敬語ですが、これは相手を敬う、相手を立てる時に使うものです。
語形自体が変化する特徴があります。

特徴的なものに、『来る』という言葉が『いらっしゃる』というように、全く違う言葉に変化してしまっているのが分かります。
尊敬語の主語は目上の人になります。

謙譲語は、自分をへりくだらせることで目上の人を立てるという言葉です。
そのため、主語が自分自身になるのが特徴です。
最も分かりやすい例として『来る』という動詞は『参る』になります。

このように、同じ『来る』という動詞が、全く違う言葉『いらっしゃる』と『参る』に変化しましたね。
それでは、丁寧語はどういうものかと言うと、これは分かりやすいです。『です・ます』調です。

そのため、『来る』の丁寧語は『来ます』ということです。

『ございます』はこの中のどれに当てはまるでしょうか。
答えは丁寧語です。

『です・ます』調になっていますし、尊敬語や謙譲語のように主語を選びません。
『質問がございますか』のように目上の方を主語にすることもできますし、『弊社にはその記録がございます』と自分を主語に取ることもできるのです。

『ございますでしょうか』は正しい?

『ございますでしょうか』という言い回しはよく見聞きしますが、これは正しい日本語とは言えません。
いわゆる二重敬語と呼ばれるものです。

言葉というものは丁寧にすればよいというものではありません。
何事にも限度というものがあります。

この『ございますでしょうか』という言い回しですが、まず『ございます』は敬語の中でも丁寧語と呼ばれるものであるとご紹介しました。
そして『でしょうか』は推量の助動詞と呼ばれるのですが、これも敬語なのです。

一つの単語に対して敬語を二重に使った間違いで、これはいんぎん無礼であるとみなされるのです。
つまり、言葉が丁寧すぎて、かえって嫌味で無礼というか誠意が感じられないというものです。

『ございますでしょうか』だけでなく、『ありますでしょうか』も同じく二重敬語です。『ます』+『でしょうか』ですからね。

『ございますか』や『ありますか』が正しい敬語です。

『ございます』と『あります』の違いは?

既に上述しましたが、『あります』をより丁寧にしたものが『ございます』という表現です。

『あります』は『ある』という動詞の連用形である『あり』に丁寧語にする助動詞『ます』を付けてできあがったものです。

『ございます』は、『ある』の尊敬語である『ござる』に、丁寧語にする助動詞『ます』を付けてできあがったものです。(尊敬語と丁寧語というように、種類の違う敬語を重ねる分には二重敬語とはみなされません。)

そのため、意味合い的に同じです。
特に動詞としての『あります』と『ございます』は全く同じです。『あります』が使われている文章に『ございます』を代用することができますし、逆もまたしかりです。

しかしながら『あります』の方には、『ございます』のように形容詞の後ろに着く補助動詞の役割はありません。

『ありがとうございます』や『お美しゅうございます』などの語尾を『あります』に置き換えることはできません。

『ございます』と『いらっしゃいます』

次に、『ございます』と『いらっしゃいます』の違いについて見ていきましょう。

先に少しだけ触れましたが、『ございます』は『ある』という動詞の敬語であるとご紹介しました。

『いらっしゃいます』は敬語の中でも尊敬語にあたるとご紹介しましたが、その際には『来る』の尊敬語としてのご案内でした。『いらっしゃいます』は『来る』以外にも『いる』という動詞の尊敬語でもあるのです。

『ある』と『いる』は英語では同じbe動詞ですが、日本語では決定的な違いがありますね。
物には『ある』を使い、人には『いる』を使います。

そのため、人が主語の時に『ございます』を使うのは間違いです。
是非とも気をつけたいところです。

それだけではありません。
『いらっしゃいます』は、人が主語になるだけでなく、目上の人が所有している物やその人に近しい物が主語に立つ場合にも、『ございます』ではなく『いらっしゃいます』がふさわしいとされます。

例えば、『ご自宅はどちらでいらっしゃいますか』が正しく、『ご自宅はどちらでございますか』は目上の相手に対しての尊敬語ではないのでふさわしくないという例です。

『ございます』を使う際の注意点

『ございます』は敬語表現であり、大変よく使われますが、使う際の注意点がいくつかあります。
既に上述したものもございますが、要点をまとめます。

注意点①:二重敬語にならないように

『ございます』を使う際に最も注意しなければならないのが、二重敬語にならないようにすることです。

他の注意点とは違い、これは明らかな間違いであり、いんぎん無礼といわれる失礼な表現であるからです。

『ございますでしょうか』という表現が正しいかどうかを上述しましたように、これが最も分かりやすい二重敬語の例です。

『ございます』は敬語の中でも丁寧語と呼ばれるものであり、『でしょうか』も丁寧語『です』の推量や疑問を表す形です。敬語の中でも同じ種類のもの、ここでは丁寧語ですが、これを重ねることはできません。

一つの単語に対して同じ種類の敬語を二重に使った間違いは、言葉が丁寧すぎて、かえって嫌味に聞こえてしまうということで、文法上もマナー上も間違いということになっています。

よかれと思って言葉を丁寧にしてしまった所が、なんでも丁寧にすればよいというものではなく、やはり限度というものがあるということですので、この点は押さえておきましょう。

二重敬語の分かりやすい例としては他にも、『おいでになられました』や『お帰りになられました』などが挙げられます。

どちらも正しい敬語にしようと思うと、『おいでになりました』や『お帰りになりました』という表現でなければなりません。

他にも、『ご覧になられますか』も二重敬語で、正しい敬語表現は『ご覧になりますか』です。
一度覚えてしまえば非常に簡単です。

注意点②:『いらっしゃいます』との使い分け

『ございます』と『いらっしゃいます』に関しては、一つ前で見出しを設けてまでご説明したところです。
相手への敬意を表す敬語としては、尊敬語の『いらっしゃいます』を使用します。

目上の人が主語になる時、それから目上の方が所有している物やその人に近しい物が主語になる時には、『いらっしゃいます』を使うようにしましょう。

『○○様のご自宅はどちらでいらっしゃいますか』や『○○様の郷里はどちらでいらっしゃいますか』などが、人以外が主語に立つときの『いらっしゃいます』の分かりやすい例です。

注意点③:謙譲語との上手な使い分け

二重敬語ではないので間違いではないものの、補助動詞の『ございます』は謙譲語表現の方が自然で違和感なく聞くことができます。

何度も例に出しましたが、『ご用意してございます』ではなく、謙譲語を使用して『ご用意いたしております』や『ご用意いたしました』の方が好んで使われます。

言葉は聞いた側、受け取る側の印象が大事ですので、間違っていると感じられたり、違和感を覚えられたりするおそれのある表現よりも、より自然な方を選択するようにしたいところです。

『ございます』は敬語ではあるものの使い方に注意

ここまでご紹介してきましたように、頻繁に使う『ございます』に関しては意外と注意しなければならない所が多いです。

一番注意したいところは二重敬語にならないようにということです。ここは特に気をつけましょう。

『いらっしゃいます』との使い分け、また補助動詞としての『ございます』は謙譲語で言い換えるなども、合わせて使い方の注意点として覚えておきましょう。ビジネス敬語として、こういったことは非常に大事です。

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