心ばかりですが、という言葉を常日頃から使い慣れていると自信を持って言える人はどれくらいいるでしょうか。
お店のサービスなどでこの言葉を耳にすることはあっても、実際に自分が使うという場面は少ないですよね。心ばかりとはどういった場合に使う言葉なのでしょうか。品物?お金?のしは必要?など心ばかりという言葉の使い方についてご説明します。
「心ばかり」とは
意味
心ばかりという言葉は心のうちの少しだけ、ほんの少しの、というような気持ちを表した表現で、自分から相手に対しての行為についてへりくだった意味を込める時に使います。
心のうちの少しだけということは、相手への贈り物が心のすべてを表しているわけではないということになります。
つまり、気持ちとしてはこの程度ではないものの、相手がお返しなどの気を使ってしまうことのないように、大したものではないんです、だから気にしないでくださいという意味が含まれています。
へりくだる表現をしたい場合はどのような伝え方をしても失礼ではないのですが、少し改まったような場面では「心ばかりなのですが。」という言葉の選び方ができるとより素敵ですよね。
類語
心ばかりの類語表現としては「ささやか」や、「少しだけ」などがあります。
いずれもへりくだった謙譲表現となっていて、品物や少額のお金を贈る際に一言添えることで「これは私のこころのほんの少しだけ」「立派なものではない」という恐縮したような気持ちを表現することができます。
使い方
心ばかりという言葉は感謝や祝福、謝罪などあらゆる場面で使う事の出来る表現です。
「先日は丁寧にご指導くださり有難うございました。心ばかりの品ですが、お召し上がりください。」
「この度はおめでとうございます。ますますのご活躍をお祈りしております。心ばかりですが私たち夫婦からのお祝いの気持ちです。どうかご笑納ください。」
「この度はお客様にご不便をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。心ばかりではこざいますが、お詫びのしるしとしてこちらの品をお納めください。
これに懲りず今後ともどうかよろしくお願いいたします。」
上記の文章のように、先にこちらの気持ちを伝えた後で「心ばかり」を使います。
英語
心ばかりなのですが、という気持ちを英語で表現したい場合は何と伝えたらよいのでしょうか。
外国人との会話の中で心ばかりやほんの気持ちであることを英語で伝えたい場合は、More tokenとう表現が一番ポピュラーに使われています。
More token of my gratitude.や、More token of my apologize.と伝えるとほんのお礼やおわびという気持ちを表現することができます。
また、Informalという単語はくだけた、形式ばらない、などの意味があり、An informal celebration.などと表現すると伝わりやすいです。
その他、Small giftという表現もストレートで使いやすい表現です。
「心ばかり」と「寸志」の違いは?
心ばかりと同じように少しだけという意味ももつ言葉として「寸志」を思い浮かべる人も多いですが、寸志は使い方に気を付ける必要があります。
心ばかりも寸志も心のうちの少しだけという控えめな表現としては同じなのですが、寸志はそもそも目下の人に対して何かを贈る時に限って使える特別な表現です。
誰もが使ってよい言葉ではないので、上司やお世話になっている人に対して寸志という言葉を使うことは大変失礼にあたります。
日頃からのしを扱うような人でなければ見慣れないという人も多いかもしれませんが、「心ばかり」という言葉は寸志や御礼などと同じようにのしの表書きとしても使えます。
寸志は目上の人のみが使える言葉ですが、目下の人だけでなく目上の人も使うことができる言葉ですので、使い分けに不安がある場合などは心ばかりという表現に変えてみると間違いありません。
「心ばかり」の言い換え表現
では、「心ばかり」の言い換え表現として以下を紹介します。
- つまらないもの
- ささやか
- ほんの気持ち
- 気持ちばかり
- 粗品
続いて、「心ばかり」の言い換え表現を、それぞれ詳しく紹介します。
「心ばかり」の言い換え表現①:つまらないもの
「つまらないものですが」という言葉は贈り物をする際に昔から日本人がよく使ってきた謙譲表現です。
本当につまらないものを贈っているわけではないのですが、気楽に受け取ってほしいという気持ちからこのように表現することが多かったようです。
最近ではつまらないという文字通りの意味に受け取られることも少なくないために、ビジネスシーンでは特に心ばかりという表現の方が耳にする頻度が高くなってきました。
「心ばかり」の言い換え表現②:ささやか
ささやかではありますが、という表現は立派なものではない、派手ではない、というようなひかえめで優しい印象を受ける表現です。
言葉の意味としては、小ぢんまりとした、小さな、目立たない、というような意味があります。
心ばかりと同じようにへりくだる意味を持つ日本語ながらも奥ゆかしく印象の良い言葉なので、結婚披露宴の招待状などおめでたいことに対して使われることも多い言葉です。
「心ばかり」の言い換え表現③:ほんの気持ち
心のうちのほんの少しだけというような気持ちを表す時に使える表現です。
お手紙などの文章としても使われますが、直接相手と話をしている中で「これはほんの気持ちだから!」というように気軽に使える便利な言葉でもあります。
心ばかりという言葉を使う際はかしこまった印象のある単語のため敬語であることが多いですが、ほんの気持ちという言葉はくだけた会話の中でも使いやすい表現ではないでしょうか。
「気持ちだから!」という言葉もほんの気持ちだから、という意味で使っていることになります。
「心ばかり」の言い換え表現④:気持ちばかり
これが全てではなく、気持ちのうちの一端を表しただけのものという気持ちを伝える際に使われる表現です。
「ほんの気持ち」ととてもよく似た表現ですが、「ほんの気持ちではございますが」と「気持ちばかりではございますが」どちらを使っても表現できる気持ちは同じです。
言葉に対する印象は人それぞれ受け取り方も違っていますし、どの表現の方が良いということはありません。
だからこそ難しいのが日本語の言葉選びなのですが、真心を持って相手に接し、その時のシチュエーションによって使いやすい表現を選びましょう。
「心ばかり」の言い換え表現⑤:粗品
ビンゴ大会やなにかの景品などにかけてあるのしに「粗品」と書かれているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか。
粗品という言葉は会話の中で使うというよりも、文章の中や品物に直接記すことの方が多い謙譲表現です。
また、粗品と書かれていても本当に粗品を贈っているわけではないのですが、「つまらないもの」という言葉が嫌われるようにネガティブな表現を嫌う人も時々います。
お礼やお祝いなど特に受け取る人の気持ちを気遣う必要のある場合には違った表現がおすすめです。
「心ばかり」の例文【ケース別】
品物
品物を渡す時には心ばかりであることを伝えたうえで、ですからどうか受け取ってください、納めてください、という一言を付け加えるとスマートな印象です。
「本日は素敵なお宅にお招きくださいましてありがとうございます。
こちらは心ばかりの品ですが、どうかご笑納ください」
「先日は落とし物ををわざわざ届けて下さりありがとうございました。
心ばかりのお礼で恐縮ですが、どうかお納めください。」
贈り物
プレゼントを贈る場合には、どういった理由で贈るのかをストレートに伝えると相手も受取りやすくなります。
「自宅の庭で採れたいちごでジャムを作りました。
お口に合うかわかりませんが、朝食にパンを召し上がると伺いましたので、心ばかりですがお裾分けです。」
「この度の転勤に際し、心ばかりですが新天地で使えそうな品を選びました。
○○さんのいない部署は寂しくなりますが、ますますのご活躍をお祈りしております。」
お祝い
お祝いを贈る場合にはおめでとうという言葉のあとにお祝いである旨を伝え、最後に何か一言付け加えると丁寧な印象を与えることができます。
「この度はご新築おめでとうございます。心ばかりですがお祝いの気持ちです。これからもますますのご活躍をお祈りしております。」
「昇進おめでとうございます。心ばかりですが、営業部一同からのお祝いです。これからもご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします。」
お菓子
基本的に食べ物を人に贈る際には日持ちのするものを選ぶのがマナーですが、念のためにこれから渡すものが食べ物であるということを一言添えてあげると親切です。
「先日のお礼として私の地元で夏の定番となっている銘菓を贈ります。心ばかりではありますが、ご賞味いただければと思います。」
「先日頂いた抹茶のお礼に、心ばかりではありますが抹茶のパウンドケーキを焼きました。お口に合うかわかりませんが、お召し上がりください。」
お土産
親しい間柄の人に帰省や旅のお土産を渡すことに特に理由は必要ありませんが、どこのお土産なのかということを伝えるとその後の会話も弾むのではないでしょうか。
「先日訪れた北海道で心ばかりですがお土産を選びました。お口に合うかわかりませんがどうぞお召し上がりください。」
「長期の休暇をいただきありがとうございました。心ばかりですが、休暇中に訪れたヨーロッパのお土産です。皆さんでお召し上がりください。」
香典
心ばかりという言葉は香典を出す際にも使われる表現です。
故人を悼む気持ちを伝える必要がありますが、葬儀場の受付などバタバタとしているようであれば、長々と話しすぎないように気を付けましょう。
「この度はご愁傷さまでした。心ばかりですが、ご霊前にお供えください。」
「突然のことで、お悔やみ申し上げます。心ばかりですが、お納めください。」
また、遠方で法事などに出られない時には香典を包む封筒の表書きをご仏前もしくはお供え、お花代などとし、香典に添えるお手紙に心ばかりですが、と記すと印象が良いです。
「心ばかり」に対する返事は?
心ばかりですが、と何かを受け取った場合どのように返事をしたらよいのでしょうか。
まず、相手が心ばかりと言っているのですから、そんなことありませんなどと否定したりする必要は特になく、ストレートにありがとうございます、と受け取れば問題ありません。
何か付け加えるとしたら、「ご丁寧にありがとうございます。」「ありがたく頂戴します。」や「お心遣いありがとうございます。」などという表現がおすすめです。
お菓子などを頂いたのであれば、お口に合うかどうか心配していることも考えられるため、後日味の感想なども含めてお礼の連絡を入れることができると素敵です。
「心ばかり」を使う時のマナー
贈り物をする時のマナー
心ばかりという言葉はおめでたい時にも弔事の時にも使うことのできる言葉なので、贈り物にのしを掛ける際には水引の種類に気を配る必要があります。
何度あっても良い進学などのお祝い事には花結び、快気祝いなどの場合は紅白の結び切りなど、水引の選び方は通常の贈り物と同じです。
しかし、心ばかりと言って贈るものは基本的にちょっとしたものであるために、わざわざのしを掛けないという場合も多くあります。
のしをかけることによって仰々しくなってしまい相手が受取づらくなってしまうことのないようにという配慮から、心ばかりという言葉を添えるだけでも失礼ということはありません。
直接手渡せない場合でも、心ばかりの贈り物であるので受け取ってほしいという内容の手紙が添えられていればのしがなくても問題ありません。
お金を包む時のマナー
心ばかりとして渡すのですから、包む金額があまりにも大きすぎると相手に対して失礼にあたります。
また、心ばかりと言っておきながら立派なのし袋に少額のお金を入れて渡すことも、同じく失礼にあたります。
心ばかりという名目でお金を包むのであればポチ袋などが適当で、来客に帰りの車代として渡すような場合にはすぐに使えるように封をせずに渡すのも心配りのうちです。
目上の人に対して心ばかりのお金を包むというシチュエーションは少ないかもしれませんが、万が一そのような必要があった場合、ポチ袋よりもお札を折らずに包むことの出来る白い封筒などがあると便利です。
心ばかりの使い方をマスターして人付き合いを円滑に!
相手を持ち上げてみたり、自分がへりくだるなど、日本語は使っていても難しいなと感じますよね。
しかし、細かくて難しいからこそ、繊細な気持ちを表現することのできる美しい言葉とも言えます。
心ばかりという一言をさらりと付け加えることによって相手が受ける印象は格段に良くなりますし、これを身につけることはビジネスの場でも良好な人間関係を築くうえで役に立ちます。
心ばかりという言葉と合わせてちょっとした心遣いのできる人になって、人もお金も運も集めてしまいましょう!
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